頬に添えられた右手を優しく離しながら、マスターはその強い眼差しで4番目を見つめる。



「私は人を『否定』しない。したくない。できない。例えせがまれても、私は苦の思いしか『否定』したくないのだ。

君が『否定』されることで、世界はなんら変わらんよ。ただ、悲しみがまた渦巻くだけだ」


「だから、僕は消えるんだよ。【失望】させるしか能のないこの世界で、負の感情が唯一色濃く寝ずいてる。

だったら、その力強い色で染めたほうが、世界もきっと喜ぶから」



マスターの右手と繋がれた、おなじく4番目の右手。

ほんのり温かさの広がる体温が、それすらもどかしくて。



「僕が消えなきゃ、それこそ世界は堕落する」


「そんなことはない」

「あるよ」

「ない」

「……あるんだって」

「だったら、私がそれを『否定』しよう」


思ってもみなかった言葉に、思わず4番目は顔を上げる。