――その絵は、彼がいつもの席に腰かけることによって完成する。 大学の付属図書館の二階、西側の大きな窓の下。金色に輝く金木犀の大木を背景に、頬杖をついて本を読む彼の姿は神々しく。 その姿を目にする度に、涙が零れそうになる。 決して汚せない、不可侵の美しさ。 彼は、私とはまさに真逆の存在で。 まるで一枚の絵画の様なその光景を、私の視界に留めることすら罪深いことのように思えて。 私は、静かにその場を離れた。