私がはじめて彼女に会ったのは、学生時代に稜の実家を訪れたときだった。
隣の家に住む稜の幼馴染だという彼女も、その頃はまだ高校生だった。
一目見て、なんて綺麗な子なのかと驚いた。
艶やかに黒い、長い髪。制服から伸びた足はスラリと細く、化粧など施していないのに、抜けるように白い肌に、赤い唇。
「すごく、綺麗な子ね」
思わずついて出た言葉に、
「そうなのかな。ずっと兄妹のように育ったから、俺にはよくわからないんだ」
稜は確か、そう答えたはずだ。妹みたいなものだから、よくわからない、と。
だから、私は少しも疑わなかった。
稜にとって彼女は妹以上でも以下でもない。
勝手に、そう思っていた。