丁寧に淹れられた珈琲をゆっくり味わいながら、ミステリー小説を堪能した私は、マスターと真由美さんにお礼を言ってお店を後にした。


 大事に胸に抱えた一輪の黄色いチューリップに、胸が弾み、足取りも軽くなる。


 黄色いチューリップを手にしていると、今彼が私の隣にいるわけでもないのに、私の体の中は彼という存在で一杯になる。


 予想外のプレゼントに気を良くした私は、もう少し遠回りをして帰ることにした。


 通りすぎる家々は、どこも春の花の豊かな色彩で溢れ、私の目を楽しませてくれた。