「あ、あれね。お店の十周年記念で、お客様に一本ずつお渡ししているの。よかったら佳奈ちゃんも持っていってね」

「わ、ありがとうございます。私、黄色いチューリップ大好きなんです!」


 そう、黄色いチューリップは私が一番好きな花だ。

 その黄色を目にしただけで、体の底から元気が湧き出てくる気がする。


 ほぼひと月前の3月13日、私の26回目の誕生日。


 忙しい彼が、その日だけは無理をして時間を作ってくれた。

 彼と付き合うようになって丸三年。初めて、彼と一緒に誕生日を過ごすことができた。


 その時に彼がプレゼントしてくれたのが、私の誕生花である黄色いチューリップの花束だった。