「…本当に…、不思議」




そう言って力なく微笑みながらナイフを掴む私の手を、美月が両手で包んできた。




「美…月……?」




「私…、このナイフを夢で見た事があるよ。砂浜に立っているまりあに海の中にいる私が、まりあにこのナイフを渡すの。その時の気持ちが、凄く不安でいっぱいだったのを覚えている。…だから本当は、このナイフをまりあに渡したくはなかったの」




「………」




美月の中で僅かだけれど人魚の時の記憶が残っているのだと分かり、思わず美月をギュッと抱きしめた。