「今朝、星野監督が突然やってきて私にこのナイフをまりあに渡して欲しいって頼んできたの…。星野監督ってまりあが出る『人魚の涙』の映画監督だよね?」




「…うん」




「って事は、まりあに直接渡せばいいのになんで私にわざわざ渡してきたんだろ?」




それは…、




目を瞑り、前世の事を思い出す。




前世で私のお姉様だった、美月---




美月の中に眠る人魚の力を少しでもこの小型ナイフに収めたくて、美月に直接監督が渡しに行ったようだ。




なにもわざわざ美月の前世がお姉さまだったからといって美月から私にナイフを渡す…、なんてまどろっこしい事をしなくてもいいと思うのだけれど…。