摘んでいたキャンディはクレアの指から離れ、ポチャリと音を立て海に落ちた。


一旦沈み浮かび上がったそれは波に揺られ、水面に広がる星空の中を泳いて行く。



コウガは掴んだクレアの腕を乱暴に引き、彼女を自分の胸に抱き寄せた。




 「…コウ、ガ……?」


驚く彼女は顔を上げようとするが、後頭部に回された右手で固定されそれを拒まれてしまう。




 「…ごめん……少しだけ、このままで居させてくれ……」


頭上で言うコウガの声は掠れていた。


とても苦しそうに、とても悲しそうなその声音。




 「…今の俺はきっと、物凄く歪んだ顔を……酷く醜い顔をしてるから……だから……」


だから、このままで…


君にこんな酷い顔を見せたくないから…


醜い姿など見て欲しくないから…



だから、このままで居させて欲しい…