防波堤に組んだ腕を乗せ、その腕の中に顔を埋める彼は微かに覗くスカイブルーの瞳を海に向けるのみ。
不思議に思った彼女は首を傾げ、彼がぼんやりと見つめる海へと目を向ける。
夜の暗い海は荒れてはおらず穏やかで、別に変わった様子は見られない。
一向に此方に目を向けない彼にチラリと視線を移した後、ポケットに片手を突っ込んだ彼女は其処から1つ、綺麗な紙に包まれたキャンディを取り出した。
紙の端を掴み、それを彼の目の前に吊り下げてみる。
この行動は傍から見れば滑稽な行動に見えるだろう。
しかし、人との接し方の乏しい彼女。
そんな彼女の最善の対応がこれなのだ。
「……」
「…っ……!?」
暫く反応が無く困ったが、顔を埋めていた彼は身を起こし、目の前にぶら下がるキャンディではなく、キャンディを摘んでいた彼女の細いその腕を掴んだ。