「くっ……」


血を流しながらも平然を装う彼を睨むと彼女は地に転がる妖刀へと手を伸ばす。


しかし、それに触れた瞬間走る激痛。




 「っあ"あ"ぁぁぁーー!!」


肉を裂くその痛み。

伸ばした左手を地につなぎ止めるように、刀が突き刺さり貫通する。



悲鳴をあげる彼女は荒い息を吐き、痛みに耐えながら彼を見上げた。




 「悪足掻きは止して下さい。貴女もこれ以上、傷を負うのは避けたい筈です」


刀を押し更に肉を裂く彼は痛みに顔を歪める彼女を冷たく見下ろす。




 「…やっと、本来の貴女自身と話が出来そうですね」


彼はそう呟くと刀を引き抜き彼女を解放した。


指を動かす事もままならない左手をさする彼女の雰囲気が、どこか少し変わったように見える。


妖刀をその身から手放した今、彼女は妖刀の気に狂わされる事無く、正気を取り戻しているようだ。




 「妖刀を管理する側である巫女の貴女が、あろう事かそれに狂わされるなどあってはならない事。しかし、貴女をそうさせたのは一族の責任でもある。貴女1人を責めるつもりはありませんよ」


刀を鞘に終うと彼女の腕を取り立ち上がらせ優しく頭を撫でた。