「貴女は既に、その妖刀に魅せられているのではないですか?」
「魅せられている……?」
彼女は既に妖刀に狂わされているように、彼の瞳にはそう映る。
妖刀から溢れ出る夥しい量の妖気は、彼女の身体を包み込み呑み込んでいる。
本来、本殿などの社で封じられる筈のその刀。
それをあろう事か持ち出して、その身に放さず付けているのだ。
妖刀に狂わされるのは仕方ない。
しかしこうなる事位、巫女である彼女自身もわかっている事の筈。
なのに何故、彼女は妖刀を持ち歩く?
「…そうですね……確かに、私は既に狂わされているのでしょう……」
憂いを帯びた表情を一瞬見せた彼女は再びジークとの距離を縮め刀を振り下ろした。