鞘から抜いた刀を右手に持ち、下段に構えるカンナギ。


彼女は地を蹴ったジークを迎え撃つ。



振り下ろされた刃を左手に持つ鞘で受け止めると共に右手に持つ刀を振り上げる。


それを後ろに跳び交わすと、再び距離を縮め刀を振るうジーク。



しかし、




 「いっ…っ……」


身体を走る鋭い痛みにその足を止めた。


ポタリと落ちる赤い雫。


視線を落とすと、身体を斜めに走る斬り傷。


先程の攻撃は確実に避け、刃を身に受けていない筈。


それなのに斬られた身体。



ジークは傷口に手を伸ばすと思考を巡らす。


確か、彼女が名を名乗った時も同じような事が起きた。


刃に触れていないのに突如切れた頬。


刃が触れなくとも、振るった瞬間巻き起きた風が刃を持つと言う事か。




 「…厄介な力ですね……」


独り呟くと柄を握り直し、悪戯に微笑む彼女を鋭く睨む。