澄んだ瞳に見つめられ、エルウィンは気まずさのあまり目をそらす。

座り込んだままの彼女を見下ろし観察していたエレナは何も言わずに彼女の後ろ襟を掴んだ。




 「…え……?」


片手で掴んだ襟を引き、彼女を引きずりながら歩き出すエレナ。

されるがままのエルウィンはキョロキョロと辺りを見渡しながらあたふたとする。




 「お前っ、何やってんだよ!?」


木の陰に隠れていたレオンは飛び出しエレナを引き止める。

が、鋭く睨まれ彼女から離れると距離をとった。




 「何て、彼女訳ありなんやろ?」


 「ま、まぁ、訳ありって言えば訳ありだな……」


 「なら、うちが更正させたるわ」


 「はぁ?」


未だ引きずられ続けるエルウィン。

自分の事なのに、彼女をおいて勝手に進んで行く話の内容。

口を挟まずにレオンとエレナを交互に見つめた。




 「うちが彼女の面倒見たる言うとんねん。丁度人手が欲しい思てた所や。手間が省けたわ」


 「…人手が欲しいって、そんなに客が来る所でもねぇだろ、あの店……」


 「何やて?」


ぼそりと呟いたその言葉に反応したエレナ。

指の骨を鳴らしながら物凄い形相で睨まれ、レオンは何もありませんと頭を下げながらエルウィンの後ろに隠れた。




 「なぁあんた、うちで働かへん?悪いようにはせぇへんからさ」


 「……」


にこりと微笑みながら勧誘するエレナ。

エルウィンは暫く黙り込んだまま、チラリとレオンに視線を移す。

優しく微笑んでくれる彼を目にした彼女はエレナへと視線を戻し、ゆっくりと首を縦に振った。




 「ほな、よろしゅうな、えっと……」


 「…エルウィン……エルウィン・アウロウ……」


伸ばされた手を今度は確実に掴むエルウィン。

立ち上がりながら自分の名を呟いた。




 「よろしゅうな、エルウィン」


エレナは満面の笑みを浮かべ彼女を抱き締める。

思いもしない出来事に目を見開きながらも、彼女は微笑むと宜しく。と小さく呟いた。