押さえつけられ身動きの取れない彼女は上に乗り見下ろしてくる彼を睨むと頭突きを繰り出した。




 「いってーー!」


彼女が頭突きなどしてくるとは思わず、それを食らった彼は額を押さえ声をあげる。


掴まれた腕が自由になり、彼を押し退け距離を取る彼女自身も額を押さえた。



上体を低くし、レオンを睨むのは黄色と赤のオッドアイ。


額をさすっていたレオンは灰色の短い髪に目を細めた。




 「…お前…誰だ……?」


その灰色の髪は狼の血を引く一族のみが持つ特有の色。


しかし、その一族の血はたった1人を残し絶えたもの。


彼、レオン以外に未だ生き残る者は居ないというのに、目の前の彼女の髪色は彼の一族のものだった。




ピクリと動く彼の鼻。


鋭敏な嗅覚は微かな臭いに反応する。


僅かではあるが、自分と同じ臭いのする彼女。


だが、似ているようで似ていない。