「どうしたの?」
慶太が、学校で話しかけてくるなんて珍しいな…
なんかあったのかな…
「ちょっと来い」
「え?」
「いいから」
慶太は私の手を引いて、強引にどこかへ連れて行く。
私は訳がわからないまま、慶太に引っ張られていた…
……………
「慶太どうしたの?」
連れて来られたのは、人気のない校舎の隅。
こんなところに来て…なにするつもりなの…?
まあ、学校で2人きりになれて、私は嬉しいけどさ♡
「…………ほら」
「!」
私の目の前に、手のひらを差し出す慶太。
「…“ほら”ってなに?」
「もらってやるから、出せよ。…クッキー」
!!!
クッキー?
「クッキーって……家庭科が作ったやつのこと?」
「うん」
「なんでそんなこと、慶太が知ってんの?それに…慶太甘いの嫌いじゃん」
「いーから出せよ!」
???
今度は、急に怒り始める慶太。
本当になんなの(汗)?
私は訳がわからないまま、とりあえずカバンから、家庭科で作ったクッキーを出した。
「……ん」
そして、慶太にクッキーを渡す。
本当は、帰って食べようと思ってたけど・・
でも…慶太がもらってくれるなら……嬉しいな♪
「…サンキュ」
「うん…」
「……じゃあな。気をつけて帰れよ」
!
クッキーをもらうと、慶太はそそくさと帰ってしまう。
な、なんなの?
本当意味わかんないんだけど…(汗)!
しかも、こんなところに取り残されても……(汗)
…早く彩のとこ、戻ろ。
駅前のアイス屋さんで、アイス食べる約束したし・・
私は、彩の待つ教室へと急いだ。
でも…
クッキー渡せて良かった……
『もらってやるから…出せよ、クッキー・・』
あの慶太の顔は、
なかなか見れないよねえ♬
顔がニヤけそうだ。
我慢、我慢っ
私の足取りは、軽かった。
教室に戻ってから、彩に早速報告をした。
彩は、自分のことのように喜んでくれた………
歩夢side
「結婚記念日?」
ある金曜日の夜
夕飯を食べていたとき、お母さんと栄治がなにやらご機嫌な報告をしてきた。
「そうよ♡明日はママとパパの、結婚記念日なの♪」
「だから、一泊でどこかに旅行しようと思ってるんだ♪」
旅行…か。
「いいじゃん。行っておいでよ♪」
約2日も親がいないなんて、ラッキー♬
「でも大丈夫?ご飯とか…2人でできる?」
お母さんが、心配そうに言う。
「何とかやるよ。心配しないで行っておいでよ」
「そお?でもやっぱり心配だわ…」
お母さんは、すごく心配性です。
明日は、2人きりかぁ…
ご飯を食べながら、目の前にいる慶太を、ちらっと見ると…
口をもぐもぐさせながら、テレビを見ていた。
2人きりになるなんて…すごく久しぶりなのに・・
慶太は、なんとも思ってないのかなぁ…
私はそんなことを考えながら、慶太のことをちらちらと見ていた。
翌日
お母さんと栄治は、朝早く旅行に出かけて行った。
ちなみに、温泉に行ったらしい…
今はお昼前
慶太はまだ寝てるみたいで、部屋から出てこない…
慶太、今日はどこも出かけないのかな…
せっかく2人きりなのに…
出かけちゃったら寂しいなぁ…
♪♪♪~
!
その時、私の携帯にメールが届く。
【彩】
【Re:Re】
おは(・ω<)☀今日なにしてるー??
永井くんのことで、色々話したいことあるから、
午後から会わない?
-END-
メールは彩からだった。
私はすぐに返事を打ち、明日まで慶太と家に2人きりだということ伝えた。
するとすぐに、彩から返事が来る。
【彩】
【Re:Re:】
うっそ!やったじゃん(*°∀°)♡♡♡
こりゃチャンスだね✨
頑張って、ムードを盛り上げるんだよ!
なにかあったら連絡して〜
-END-
彩は良い奴だ♪
カタン
!
すると、階段から物音が…
慶太が起きてきたみたい。
「……よう」
「おはよ」
腕をボリボリとかきながら、あくびをする慶太。
「親父と奈緒子は…?」
「とっくに出かけたよ」
「ふーん…お前はどこも出かけないの?」
「出かけないよ。彩、今日は用事があるんだってさ」
嘘ついちゃった(汗)
ごめんね、彩!
「栗原しか、友達いねえのかよ(汗)」
「う、うるさいな…」
どーせ、友達少ないですよ(汗)
「慶太は?どっか行くの…?」
「いや…予定はない」
「そう…」
やったー♡♡♡
「腹減ったな…」
冷蔵庫を開けて、物色する慶太。
「なにか作ろうか?何がいい?」
「”何がいい?“って…(汗)お前が作れる料理っていったら、アレしかねえだろ」
「バレた(汗)?」
「オムライスだろ?」
「ピンポーン」
私はそう言って、棚からフライパンを出した。
私が、唯一作れる料理。
それは”オムライス“です。
そのわけは、慶太との幼い頃の思い出にあります…♡
……………
………
あれは5歳の時…
『ねえねえ、あゆむちゃんはすきなひといるー?』
『え…』
保育園の友達に、ある日こんなことを聞かれた。
『…いない』
なんとなく、嘘をついた私。
好きな人がいるということが、なんだかかっこ悪いような気がしたから…
『そうなんだ〜。あたしはいるよ♪おにいちゃん!』
『おにいちゃん?』
『うん!おにいちゃん、やさしいからスキ〜!…でもね、おにいちゃんとは“けっこん”できないって、ママがいってた』
『え、なんで?』
『キョーダイだから…なんだって』
『ふーん…』
友達と、そんな会話をした数日後…
私はお母さんと、栄治と慶太が住む家に遊びに来ていた。
お母さんたちは、リビングで話をしていて…
慶太はプラモデルで遊んでいて、私は当時好きだった少女アニメのビデオを観ていた。
『かわいいな…』
少女アニメのキャラクターが、可愛いドレスを着ている。
アニメのシーンは、主人公が結婚式にお呼ばれしているシーンだった。
『けっこんしてる…』
『あ?』
アニメを観ながらポツリとつぶやくと、それを聞いていた慶太が、こっちを向いた。
『けっこんて…あゆむもできる?』
『だれでもできるだろ』
『フーン…』
『なんで?けっこんしたいの?』
『したいよ♡ドレスきたいもん』
当時の私の中の結婚のイメージは、結婚式で、可愛いドレスを着ることでしかなかった。
『…だれとけっこんすんの?』
『けいた』
『は!?』
『…ダメ?』
『……………いいけど(汗)』
嫌そうな顔をする慶太。
『やくそくだよー?』
『ハイハイ…』
どうでも良さそうに、慶太は返事をした。
『なぁ、ちょっといいか?』
!
すると…栄治とお母さんが、私たちのところへやって来る。
なにやら2人が、かしこまった顔をしていたことが、幼い私にもわかった。
『実はね…俺と奈緒子、結婚しようと思うんだけど・・』
え………
栄治の口から出た言葉は、意外なことだった…
けっこん…?
私と慶太は、驚きで言葉がでない。
『ごめんね。親の勝手で、今まで寂しい想いさせたね…でも、これからは毎日楽しくなるよ』
『私たちが結婚すれば、慶太くんと歩夢は…ずっと一緒なのよ?お家も一緒だし、それに兄妹になるの』
『キョーダイ……?』
“兄妹”という単語が、当時の私の頭の中には、まだ真新しいものだった。
“キョーダイは、けっこんできないって、ママがいってた”
保育園の友達が言っていた言葉を、思い出す。
じゃあ…慶太とは結婚できないんだ・・