「…花火大会?」
ファーストフード店の店内の壁に、花火大会開催のお知らせのポスターが貼ってある。
「しかも、日程が…」
「そう!今度の日曜日!」
日時もピッタリ♪♪
「いいじゃん!花火大会で!ってことは…」
「浴衣で行こう♡」
そうなるよね♪
「きゃーー初デートが花火大会なんて、めっちゃ良くない?」
しかも、夜だし…なんかロマンチックだよ♡♡
「そうだね!早速お母さんに、浴衣出しといて貰わないと!」
「私も!あ…明日にでも、髪に飾るアクセ買いに行こうよ」
「行こう行こう!日野くんには連絡しとくね」
彩は、嬉しそうにそう言った。
楽しみだなぁ、花火大会。
慶太と最後に行ったのは、いつだろう…
多分、小学生だな。
この歳になっても行けるなんて…マジで嬉しいよ…
よーし!
気合い入れるぞーー!
…………
「ただいまー」
夕方
彩と別れ、家に帰ってきた私は、玄関で雑にサンダルを脱いだ。
「おかえり、歩夢。あーあ…ちゃんと靴片たせよ(汗)?奈緒子のやつ、うるさいから…」
出迎えてくれた栄治が、そう言いながら苦笑いをする。
「わかってるよー。…あ、慶太いる?」
「うん、部屋にいるぞ」
私は靴を片付けて、2階へ駆け上がった。
そして、真っ先に慶太の部屋のドアをノックする。
コンコンコンコン!
いつもより、ドアをノックする回数が多い(笑)
ガチャ
「!」
「…んだよ、うるせえな(汗)」
ボリボリと首筋を掻きながら、部屋から慶太が出てくる。
「ねえ!今度の日曜日さ〜」
「花火大会だろ?」
え…
私より先に、慶太の方から花火大会のことを言ってくる。
「なんで知ってるの!?」
「今、圭佑からメールきたから」
!
彩ってば、もう圭佑くんに花火大会のこと話したんだ!
もう〜かわいいな♡
「花火大会、慶太も行くでしょ!?」
「……ま、強制だろ(汗)?」
「ふふ♪アタリ」
行かないとは、言わせないよー
「彩も楽しみにしてるから、ドタキャンはなしだよ?」
「はいはい」
「それだけだから♪」
「なんだよ、お前は(汗)」
「ハハ」
呆れながら、部屋のドアを閉める慶太。
私も自分の部屋に戻った。
最近、慶太と話すのは…少し気まずかったりしたけど・・
イベントの直前だと、そんなこと気にならなくなる。
イベントって、すごいなぁ。
さて!
今から雑誌で、浴衣に合う髪型とか調べて……明日彩と買いに行く髪飾りを、なんとなく、決めておこう♪
あと、お母さんに日曜日まてまに、浴衣を出しといてって頼んで…
うぅ〜やることいっぱい!
でも、楽しい♪
彩も今、私と同じことしてるかな?
当日は…圭佑くんと、いい感じになれるように、協力しなくっちゃね!
私も慶太と…………
うん、がんばろう♡♡♡
歩夢side
「あらかわいい♡やっぱり、女の子はいいわね〜」
私の浴衣姿を見て、お母さんがはしゃいでいる。
今日はいよいよ、花火大会!
天気もいいし、気温もちょうどいいから…花火大会にうってつけだ。
午後からメイクをして、髪に1時間以上かけて、今はお母さんに浴衣を着つけてもらったところ。
浴衣に袖を通すと、夏なんだと…実感する。
この浴衣、去年買ったやつだけど…やっぱりかわいい♡♡
髪も崩れてないよね?
なかなかキマらなくて、髪に時間取られたから…腕が痛くなっちゃった……(汗)
でも、やっとキレイにできたよ…
編みこみって、難しいなぁ…
そんなことを思いながら、全身が映るミラーで、髪の毛を確認する。
「……準備できた?」
!
お母さんの部屋のドアから、ひょこっと顔を出す慶太。
振り向くと、慶太も浴衣姿だった。
慶太も浴衣着てくの!!?
き、聞いてないよーーー!
浴衣姿の慶太に、ドキドキする私!
何年も一緒にいるのに……変なの。
「う、うん…できてるっ」
「じゃあ、外で待ってる…」
「はーい…」
顔を引っ込めて、階段を降りていく慶太。
「慶太も浴衣似合ってるわね♪」
「ま、まあね…」
部屋を、片付けながら言うお母さん。
私は浴衣に合う小さいかごバッグに携帯を入れ、階段を降りて玄関へ向かった。
そして玄関で下駄を履き、外へ出る…
「いってきまーす…」
玄関のドアを開けると、慶太が家の前の道路にしゃがみ込んで、携帯をいじっていた。
「慶太がいるから大丈夫だと思うけど、気をつけていきなさいよー」
「わかってるー」
階段の上から言うお母さんに、返事をしたあと、私は玄関を出て、ゆっくりと慶太に近づいた。
「おまたせ…」
お互いいつもと違うからか、少し恥ずかしい私は、やや俯きながら慶太に話しかける。
「…………」
「な、なんか言ってよっ!」
慶太は何も言わずに、ただ私をじーっと見つめる。
「…腹減った」
「は(汗)?」
「猛烈に腹減ってる」
「・・・・」
私の浴衣姿の感想はないんだ(泣)
ハイハイ、わかってましたよ!
「土手に行けば、出店が出てるから、なにか食べれば?」
「うん。たこ焼き、焼きそばが俺を待ってる」
「あはは、なにそれ〜」
そんな話をしながら、慶太と彩たちとの待ち合わせ場所に向かって、歩き始める。
「そういえば慶太って…お祭り行くと、絶対たこ焼きと焼きそばは買うよね?」
それで、絶対私に分けてくれないの!
たこ焼き1個くらい、くれてもいーのにさ!
「当たり前だろ。祭りといえば、たこ焼きと焼きそばだろ」
「え〜かき氷じゃない?」
「あー…お前は祭り行くと、いつもかき氷食ってたわ(汗)絶対いちご味」
「い、いーでしょっ(汗)かき氷好きなの!」
特にいちご味が!
「いつも全部食えなくて、残ったやつは俺に食わせるくせに…」
「う…(汗)だって、多いんだもん」
「いちご味じゃなくて、ブルーハワイにしろよ。だったら、残ったやつでも気持ちよく食ってやる」
「え〜ブルーハワイ嫌だ」
舌が、青くなる…(汗)
「かき氷は、ブルーハワイだろ」
「この前雑誌に書いてあったけど、かき氷のブルーハワイ派の人って、チャラいんだって」
「なんだよ、それ(汗)会話ズレてるぞ」
待ち合わせまで歩く間…慶太との会話は、途切れることはなかった。
恥ずかしい気持ちも、昔話をすれば自然に消えてしまう…
幼馴染みも、悪いとこだけじゃないと思った。
…………
「彩〜!」
「歩夢ー!」
待ち合わせ場所付近で、彩と圭佑くんを発見。
私と慶太は、2人に近づいた。
「彩かわいい♡」
彩の浴衣姿に、思わずドキッとしてしまう。
藍染めの紺色の浴衣は、彩にすごく似合っていて、なんだか大人の色気を感じた。
「歩夢の方がかわいいよ♡♡♡髪もアップにしたんだね♪」
私と彩のお決まりの、褒め合いタイムはほどほどにして……(笑)
「圭佑くんも浴衣じゃん!」
慶太と話す圭佑くんも、今日は浴衣姿。
それに気づいた私は、彩に小声で耳打ちする。
「う、うん…そうだね」
「かっこいいとか思ってる?♪」
「………歩夢はどーなのよ?本田くんも浴衣じゃん」
「………かっこいい……ですね、はい(汗)」
認めますよ(汗)
「ふふ♪素直でよろしい」
彩と笑い合いながら、鏡を出して髪をチェックする私。
「とりあえず何か食べようか?打ち上がるまで、あと30分くらいあるんだよ」
圭佑くんが、慶太の時計を見ながら言う。
「場所取りしなくて大丈夫?」
彩がキョロキョロしながら、圭佑くんに聞く。
「ああ、それならバッチリ♪もう後輩に場所取り頼んであるから、心配いらねえよ」
「さすがだね〜(汗)」
笑い合う2人。
こう見ると、カップルみたい…♡
お似合いだな♪
ぐぃ
「っ!」
すると、浴衣の袖を誰かに引っ張られた。
横を見ると…袖を引っ張ったのは、慶太だった。
「迷子になんなよ」
「う、うん…」
慶太のちょっとした気遣いにも、妙に意識してしまう…
浴衣パワーって、本当にすごい。
チラッと後ろを振り返ってみると…
「アハハハ♪」
「な?ウケるだろ!?」
彩と圭佑くんも、なんだかいい感じ♪
このまま、うまくいくといいな。
ドスッ
「おっ…と」
そんなことを考えて歩いていたら、すれ違う人にぶつかってしまった私。
人が多いな、やっぱり(汗)
「気をつけろよ(汗)」
!
隣にいる慶太が、私を見下ろしながら言った。
「わかってるよー。……人が多いね」
「まあな。花火大会は、仕方ねえよ」