慶太は慶太の友達がいて、自分の世界があって…
私は私の友達がいて、自分の世界がある。
だから今は、私と慶太が一緒になにかをするって、すごく少ない気がする…
私はもっと色々やりたいのに〜!
「慶太!」
!
学校の校門が見えてきた時、向こうの方から慶太の友達が慶太を呼んだ。
「あ、雅人だ。俺先行くわ…」
「ぁ…」
慶太は友達のところへ、行ってしまった。
1日の中で、せっかく慶太と二人きりになれる時間だったのに〜
私はため息をつきながら、慶太の後ろ姿を眺めていた。
「歩夢〜」
!
すると、後ろから私を呼ぶ声が…
振り返ると…
「彩(あや)!」
色白でショートカット美女の、栗原 彩(くりはら あや)
彩は中学からの、私の親友。
「見ーちゃった♬今日も、朝から本田くんと登校ですか♥」
からかうように言う彩。
彩はうちの事情を知っていて、私が慶太のことが好きなことも知っている。
「でも、友達に呼ばれて行っちゃったー。もっと一緒にいたかったなぁ」
「いいじゃん!家では毎日一緒なんだから」
「そうは言ってもね〜…最近はあんまり家にいないんだ、慶太…」
家にいても、寝てるか、バイクいじってるかだもんね…
「…ふーん・・そういう年頃なのかな」
「“年頃”(笑)」
「アハハ♪」
彩に話すと、気持ちが軽くなるよ。
「そういえば…今日の1時間目、家庭科でクッキー作るんだよね♪」
「そうだったね!エプロン持ってきた?」
「持ってきたよ♡新しいの買っちゃった」
「えー見せて見せて♬」
私と彩は、教室まで急いだ。
こんな感じで、私は毎日を送っています…
困ったヤンキーくんと一緒に暮らしていると、大変なこともありますが…
慶太の顔も、
スタイルも、
性格も、
仕草も、
全部スキです!
大好きな人と一緒に暮らせて、本当に幸せ…♥
あ、言い忘れてましたが…
家族とはいえ、私と慶太の苗字は違います!
戸籍上は家族なのですが…学校に通う上で、色々とややこしいので、私は旧姓のままの名前を名乗ることしにしました。
椎名 歩夢
只今、本気で恋してます♥
慶太side
『慶太…今日は紹介したい人がるんだ』
『しょーかい?』
4歳の時…
ある日、親父から突然そう言われた。
『紹介するのは、女の人と女の子なんだが…』
『ハッキリ、かのじょっていえば?』
『・・・(汗)』
俺んちは、物心ついた頃から母親がいなかった。
親父の話によると、俺を産んだあと…母親は、離婚届けにサインして失踪したらしい…
まあ、自分勝手な母親だったてことだ。
『その…彼女は・・すごく良い人だよ。その人も子持ちだしね』
『……こもち?』
『そう。お前と同い年の女の子がいるんだ』
『ふーん…』
親父とそんな会話をしてから数時間後…
子供を連れた女の人が、わが家にやってきた。
『慶太くん、こんにちわ!私は奈緒子(なおこ)。よろしくね♪』
『ヨロシク』
その女の人は、すげえ美人で優しそうだった。
親父やるな…と思った。(笑)
『この子は、私の子供の歩夢よ』
『…あゆむ?』
その女の人は、自分の後ろに隠れている女の子を俺に紹介してくれた。
その女の子はモジモジしながら、俺のことをチラチラ見ている。
『ごめんね(汗)この子、すごく人見知りなの…でも、仲良くしてくれないかな?』
『…いいよ』
俺はその歩夢って奴を、じっと見つめた。
歩夢は色白で、少し茶色くてサラサラの長い髪…
目をくりくりさせて、俺のことを見ていた。
この日から…
俺はなんかオカシイ……
♪♪♪♪〜
朝7時。
携帯のアラームが鳴る。
俺は眠い目をこすりながら、アラーム音を止めた。
時は過ぎて、現在。
俺は高校1年になっていた。
あれから俺の父親と、歩夢の母親は結婚。
俺達は、義理の兄妹になった。
「ふぁ…」
あくびをしながらベットから降りて、部屋を出る。すると…
「…!」
隣の部屋の歩夢も、ちょうど部屋から出てきて行き合った。
「よう…」
「おはよう」
歩夢はもう制服を着ていて、化粧をしていた。
昨日と化粧が変わってる…
こっちの方が、かわいい……
俺はそう思いながら、階段を降りて洗面所で顔を洗った。
後ろから、歩夢がリビングに入る音がした。
顔を洗い終えた俺は、次に歯磨きを始める…
歯を磨きながら、なんとなく…洗面台に置いてある物を眺めた。
洗面台には、親父のひげそり道具の他…
あとは全部、歩夢のヘアメイク関係のものが置かれている。
あいつ…
高校に入ってから、なんか色気づいてやがんな…
俺は歯を磨きながら、そう思っていた…
高校に入学してから約2ヶ月。
歩夢は、急激に変わった。
変わったといっても、中身は特に変わったわけではなく、
変わったのは見ため。
化粧をして、髪の毛を染めて…
なんか大人になった?と、いうか…
うまく言えねえけど、子供っぽさがなくなった。
スカートは短けえしな…
なに考えてんだろ…
俺はうがいをして、洗面所から出る。
そして部屋に戻って制服に着替え、また1階に降りた。
用意されていた朝食を食わず、奈緒子(歩夢の母親)に弁当として持たされ、歩夢と一緒に外へ出る。
「なんか寒い…」
外へ出た途端…
歩夢がポツリとそう言った。
俺と歩夢は、肩を並べて学校まで歩く…
これが日課。
俺と歩夢は、親が再婚してから、
こうやって毎日学校に通っていた…
中学の頃は、学校に行くのがダルくて…よくサボってたけど・・
それが親父にみつかって、それからこうして毎日、歩夢と学校に登校することが約束(汗)
朝起きるのとか、正直しんどいけど…
今のところ、俺は真面目にやってる。
チラっと、隣にいる歩夢を見ると…普通の顔して普通に歩いてる。
でも、俺は気づいていた…
すれ違う男という生き物が、歩夢をチラチラ見ていることを…
本人は気づいてねえと思うが…歩夢はかわいいからモテる。
小学校、中学校とも…歩夢は裏で、男から人気があった。
まあ、本人が直接誰かに告られたことはねえと思う。
なんせ、俺が歩夢の隣にいつもいるから…
近づく奴はいなかった。
高校に入ってからも…ちらちらと、歩夢が人気があるということは耳にしている。
…阻止しねえとな。
「・・・・」
俺はすれ違いざまに、歩夢のことをチラ見していた他校の男を睨んだ。
男は俺から目をそらして、その場を離れた…