歩夢side
『歩夢…ママのお友達の栄治(えいじ)おじちゃんだよ』
4歳の時…
お母さんから紹介されたのは、顔の怖いおじさんだった。
『歩夢ちゃん、こんにちわ♪これからヨロシクね!おじさんの子供を紹介してもいいかな?慶太だよ』
おじさんの隣には、チュッパチャプスをくわえた同い年くらいの男の子が立っていた。
かなりの人見知りだった私は、お母さんの後ろに隠れて、なにもできないでいる…
!
するとその男の子が、私に近寄って来て・・・
なでなで。
っ!
私の頭を撫でてきた。
そして…
『…これやるよ』
『……!』
男の子は、私に未開封のチュッパチャプスを差し出した。
私は戸惑いながらも、男の子からチュッパチャプスを受け取る。
『…ありがとう』
お母さんの洋服をいじりながら、ボソッと言う私。
すると…
『外であぼうぜ!』
『えっ…』
男の子は突然私の手を握り、そのまま外に走り出した。
そのまま私とその男の子は、暗くなるまで公園で遊んだ。
裸足になって、どろんこになって、服が真っ黒になるまで遊んだ。
これが出会いだった…
この日から…私の恋が始まった。
「歩夢ー!起きてるのー??」
朝7時。
1階から、お母さんが私を呼んだ。
「起きてるー!今、化粧してる〜」
部屋のベットの上で化粧品を広げ、ドアに向かって声を出す私。
「えー化粧!?あんたいつから化粧始めたのよーもうご飯食べなさい!学校遅刻しちゃうわよっ」
うるさいなぁ…
お母さんを無視して、化粧を続ける私。
私は椎名 歩夢(しいな あゆむ)
16歳
私の家庭はちょっと複雑です…
ガチャ…
化粧が終わり、学校の制服に着替えた私は、カバンを持って部屋を出る。
「あ……」
部屋を出ると、ちょうど隣の部屋から、まだ部屋着姿のままの、イカつい人が出てくる。
「…よう」
「おはよう」
眠そうに、腕をポリポリと掻くのは…
本田 慶太(ほんだ けいた)
同じく16歳
私が幼い時、彼のお父さんと、私のお母さんが再婚しました。
お互い子持ちだったため、私はある日…男の子の兄妹ができました。
「今起きたの…?早くしたくしてね」
「…はいはい」
慶太はダルそうに1階に降りていき、脱衣所に入って行った。
そのある日突然できた兄妹が、慶太です。
慶太とは…
幼馴染みでもあり、
家族でもあり…同級生でもあります。
保育園も、小学校も、中学校も同じ学校に通っていました。
そして今、私たちは高校1年生。
高校も、同じ学校に通っています。
「おう、歩夢!おはよう♪」
「おはよう」
1階のリビングへ行くと、慶太の実の父親の栄治(えいじ)が仕事へ行く準備をしていた。
栄治は、昔はバリバリの元ヤンだったらしく…
顔が怖いせいもあり、その雰囲気を今もかもし出しています。
でも心はすごく優しくて、特に私にはすごく優しくて、甘いです。
「ごめんね。今日も慶太をよろしくな」
私の頭をポンと撫で、栄治は仕事へ出かけて行った。
「慶太は起きたの?」
お母さんが、朝食の準備をしながら、私に話しかける。
「うん…今、脱衣所にいる」
私はそう言って、朝食のパンを頬張った。
あまり言いたくないのですが…
慶太は中学頃から、グレてしまい・・
いわゆる『ヤンキー』というやつになってしまいました。
喧嘩やタバコ…
その他諸々のことをしでかして、私たち家族を困らせる慶太。
せめて高校だけは卒業して欲しいという、栄治のために…
私は毎日慶太と一緒に学校に通学して、慶太をサボらせないようにしています。