留美子が言うように、生産棟に「赤い人」はいたはず。


そうなると、良くて3人の内のふたりは犠牲になった事になる。


振り向いた人がまず殺されて、それを見たふたりのどちらかが、追いかけられて殺された。


最悪、3人とも殺されたという可能性もある。







「あ~かい ふ~くをくださいな~し~ろい ふ~くもあかくする~まっかにまっかにそめあげて~お顔もお手てもまっかっか~」








あの不気味な歌が……廊下から聞こえる。


その瞬間手を止めて、私は留美子の手を取り、ドアに、もたれるようにしてかがんだ。


この会議室のドアの横は、すりガラスの窓になっている。


もしも、「赤い人」をすりガラス越しに見たとして、それでも振り返ってはならないとしたら?


「赤い人」が会議室の前を通れば、私は気になって見てしまう。


それなら、あえて見ないようにしてドアに背を向ける。


私と留美子は、ガタガタと震えながらも、お互いの手を握り締めていた。


ひとりでいるよりも、ふたりでいた方が、少しだけでも安心できるから。


「留美子、ここでやり過ごそう……」