数日前までの、冷静な翔太の姿じゃない。


憔悴し切ったその顔は、同級生とは思えないくらい老けて見える。


そんな翔太の懇願を、留美子はあっさりと断ったのだ。


「だって、あんたが振り返ると『赤い人』が来るじゃない! そうなったら、見てない私達まで『赤い人』を見る事になるでしょ!! だから、いてほしくないの!」


そう、留美子が言う通り、翔太が振り返れば、今は生産棟にいるはずの「赤い人」は、瞬時にここに移動する。


私が「昨日」、西棟の三階に追い詰められて……

「赤い人」が突然消えたように。


だとすると……なぜ翔太を追いかけていた「赤い人」が、突然生産棟に移動したのか。


「もしかして、誰か……振り返ったんじゃない? 『赤い人』を見たのに」


そう考えれば、理解する事はできた。


「ちょっと待ってよ、それじゃあ、3人で行ったあいつらは……」


その可能性を考えていなかったのだろうか?


留美子は驚いたように私の顔を見た。


でも、その表情は、心配や不安といったものではなく、口角が少し上向きで……笑っているようにも見えた。










「だから言ったじゃん。私は言ったよね!? 止めろって!だったらあいつらも自業自得じゃん!」