半狂乱でカウンターを、バンバンと叩く翔太の姿に、私は恐怖を覚えた。


どうして翔太がここにいるの?


「赤い人」に殺されたんじゃないの!?


「あ、あんたこそ! 何でこんな所にいるのよ! 3人は生産棟に向かったのに!! あんた……まさか、また!?」


赤い手の正体が翔太だとわかった留美子が、カウンター越しに問い詰める。


「ち、違う! 逃げてたら……いつの間にかいなくなってたんだよ!! 嘘じゃない!」


「じゃあ、あんたのその血は何なのよ!! 一体誰の血だって言うのよ!」


「『赤い人』にしがみ付かれたんだよ!! 何度も何度も!!靴まで取られた……」


顔をくしゃくしゃにゆがめて、必死に訴える翔太。


でも、もしもその話が本当だとすると、「赤い人」はどうして生産棟に現れたのだろう?


どうして、翔太を追いかける事を止めたのだろう?


何か……この後に、もっと悪い事が起こるような。


そんな胸騒ぎがした。


「とにかく! あんたは私達と一緒にいないで! 早くどこかに行ってくれない!?」


それだけを聞くと、無慈悲な言葉に聞こえるけど……留美子の意見には私も賛成だ。


「なんでだよ!? 俺にまだ『赤い人』を押し付ける気か!?頼むから、ひとりにしないでくれよ……もう嫌だよ」