「あのときさ、千夏はピンクの浴衣着てたよな」

「そうだっけ?」

「忘れた? 可愛かったのに」



拓海はふっと笑う。

この人に“可愛い”なんてはじめて言われた気がする。

なんだか、心臓が騒がしい。



「千夏」



名前を呼ばれたので横を向くと、目が合った。



「千夏は仕方なく俺のこと好きだって言っただろうけど」



拓海はまた空を見上げて、



「俺は千夏のこと、大好きだから」



ちょっと照れながら、そう言った。