それを合図に、またひとつ、またひとつ、次々と夜空に花を咲かせる花火たち。
「お、はじまったな!」
拓海はそれを嬉しそうに見上げた。
私も顔を上げて、ボーッとそれを見つめる。
「覚えてるか?」
「……なにを?」
「昔もこの場所で見たよな、花火」
昔……?
私は頭のなかで記憶を探り、
「そう、だったね」
そして、見つけた。
あれは私と拓海が今よりずっと仲良しだった、子供の頃。
花火大会の日、今日みたいな人混みに流されて、お母さんたちとはぐれてしまった私たち。
泣いてた私の手をずっと放さなかった拓海。
とりあえず人混みから離れようとして、この階段を登った。
そして丁度ここらへんで花火が上がったんだっけ。
綺麗だったな……。