「まだ時間あるし、なんか食おうか」



小さな花火大会だけど、やきそば、たこ焼きにかき氷、定番の出店はぽつぽつと並んでいる。

私は多くなってきた人混みにのまれないよう拓海の横を歩く。



「拓海はなに食べるの?」

「え? ああ、千夏は?」

「私はねー……」



周りを見渡して、一番最初に目についた屋台を指さす。



「焼きそばにしようかな」

「わかった」

「あ、」



拓海は私の右手を掴むと、「はぐれるなよ」と一言。

少し驚いたけど、こういうことをさりげなくできるようになったんだな、なんて思ったりもした。