「ねえナオ、これ…」
そう言って彼が指差した地面を見ると、そこは、土が盛り上がっていた。
隣には名前の知らない花が植えてある。
だけどその花はもう枯れていた。
そこは……
「ネコを、埋めたの」
去年の冬、傷だらけで冷たくなって路地裏に捨てられていたネコ。
あのまま、たった一人きりで死ぬのはあまりにも可哀想だったから。
せめて私だけでも。
存在を覚えていてあげたかった。
「…優しいんだね」
顔を上げると、微笑んでいる彼と目が合った。
その笑顔が蒼太に重なって…頬が赤くなったのを悟られないように、と、またうつむいた。
「…別に、ただの同情よ」
…そう。
ただ単に『可哀想』。
そう思ったから。
そんなのただの同情でしかない。