おかげで腕には筋肉がついてしまった。

でも、チューバの低くてずっしりした音が大好きだから。
私みたいな小さい人でも、みんなの音を包んで支えられるから。

チューバを片手に、譜面台と譜面を持って広場にでた。


「よく片手で持てるね…」

「慣れればどうってことないよ。」


通りすがりに、同じクラスでいつも一緒にいるサッチーから声をかけられた。

志村 沙智(しむら さち)。
小学校からトランペットを吹く、吹奏楽部の副部長。
二年時にレッスンを受けてから、音が格段によくなり、今ではオーケストラに入れるんじゃないか、と密かに囁かれている。

社交的で、みんなをまとめるのに適している人だと思う。

私の憧れでもあるのだ。


「西野と話してたねぇ〜」

「そりゃ、同じ楽器だし…」

「とか言って〜?」

「もぉ〜、サッチー…」


そう、私は西野に恋をしている。
それも、一年の時からだから、もう三年になる。

ずっとずっと、私の片思い。