音楽室のそばの小さな屋根がある広場に、高い人影が見えた。

最近視力が下がってきたから、よく見えないけど。
あれは…


「シン!
遅刻かよー。
点呼終わったぞ!」


…やっぱり。


「はいはい。
聞こえてたでしょ?
呼・び・出・し!」

「お前絶対担任に好かれてるだろ。
呼び出されすぎ!」


高らかに笑うこいつ。
3年1組、西野 瑞貴(にしの みずき)。
三年間理系特進クラスに在席する、吹奏楽部男子だ。

理系特進クラス…というのは。
何かの手違いだろう。
だってこいつは、見るからにアホだ。

ちなみに私は二年から文系特進クラスに在席している。
教室は二階の端っこで、西野とはちょうど上下だ。
西野は三階の端っこの教室だ。

西野と私は、吹奏楽部の同じパート、低音楽器が集結するバスパートだ。