それから数日。
パート練習中に私は聞いてしまった。
「西野ー。
咲ちゃんとはもうどれくらい?」
同じパートで、コントラバスを演奏する同じ学年の女子が言った。
どれくらい?
って…
西野が少し焦ったのを横目で見た。
ーーあぁ、付き合ってるんだ。
「…一ヶ月かな。」
「へぇー!
なかなか経つね!」
「おう!」
ーそれからのことはよく覚えていない。
覚えてるのは、二人は一緒に登下校をしている、とのことだけだった。
その後の合奏では、音程を何度も間違え、音楽室から出されて、泣きそうになりながら自主練をした。
私が吹くチューバの低い音は、まるで嘆きのようだった。
秋空に、すぅっ、と吸い込まれていった。