ついにその時が来た、と加奈子は思った。今更拒むのは失礼だし大人気ない。という事で、加奈子は「はい」と言って目を閉じた。
加奈子が男とキスをするのはずいぶん久しぶりだった。入社する前の学生の頃以来だから、かれこれ8年か9年ぶりだろうか。
加奈子には、数は少ないが恋愛経験はある。いずれも学生の頃の事で、キスもその先も経験がある。いずれの相手も、当時は加奈子が心から愛した男達だった。愛していない男とキスをするのは、今回が初めてだという事に加奈子は気付いた。
(大人気ない、か……。大人になると、好きでもない男とキスやその先をしないといけないのね……って、それは違うんじゃない!?)
加奈子はパッと目を開けると、正に香川の唇が加奈子のそれに触れる寸前で顔を逸らした。
「岩崎君……?」
「ごめんなさい。やっぱり出来ません」
加奈子は、自分の勝手さに自分でも呆れた。ここまで来ていながら、今更“出来ません”もないだろう、と。いくら穏健な香川でも怒るだろう。怒って当然だ。もし力ずくで香川が迫ってきたら、加奈子は抵抗しないつもりだ。優柔不断だった自分への罰として……
加奈子が男とキスをするのはずいぶん久しぶりだった。入社する前の学生の頃以来だから、かれこれ8年か9年ぶりだろうか。
加奈子には、数は少ないが恋愛経験はある。いずれも学生の頃の事で、キスもその先も経験がある。いずれの相手も、当時は加奈子が心から愛した男達だった。愛していない男とキスをするのは、今回が初めてだという事に加奈子は気付いた。
(大人気ない、か……。大人になると、好きでもない男とキスやその先をしないといけないのね……って、それは違うんじゃない!?)
加奈子はパッと目を開けると、正に香川の唇が加奈子のそれに触れる寸前で顔を逸らした。
「岩崎君……?」
「ごめんなさい。やっぱり出来ません」
加奈子は、自分の勝手さに自分でも呆れた。ここまで来ていながら、今更“出来ません”もないだろう、と。いくら穏健な香川でも怒るだろう。怒って当然だ。もし力ずくで香川が迫ってきたら、加奈子は抵抗しないつもりだ。優柔不断だった自分への罰として……