「わかった、言うよ。でも俺から聞いたって言わないでくれよな?」

「言わないから、早く……!」

「ん。大輔はさ、姉貴の事が好きなんだと」


その瞬間、加奈子はズキュンと胸をピストルで撃ち抜かれたような気がした。

(嶋田君が私を……好き!? 本当に?)


「でもさ、姉貴にそれを言えなくて悩んでた」

「ど、どうして……」

「自分に自信がないんだと。八つも下のガキだし、強烈なライバルはいるし……」

「ライバル?」

「ああ。今日、姉貴が連れて来た奴さ。大輔から見ても完璧な大人の男で、そいつにはとてもじゃないが敵わないって……」


(そんな事ないのに、嶋田君のバカ……!)


「俺はそんなあいつを励まして、最後は奴も姉貴に告白するって言って……って、姉貴!?」


加奈子は剛史の話が終わるか終わらないかの内に、バッグをひっ掴むと部屋を飛び出して行った。そんな姉の姿を、剛史はニヤッと笑って見送るのだった。