日曜日の午後。香川は加奈子の家を訪れ、加奈子の両親に挨拶をして帰って行った。加奈子の父も母も、加奈子が予想した通り、香川の事をとても気に入ったようだ。


「加奈子、とても素敵な人じゃないの……。ねえ、あなた？」

「そうだな。悔しいぐらいに申し分のない男だ。彼になら大事な娘をくれてやってもいいだろう」

「なるべく早く結婚しちゃいなさいよ？ 彼の気が変わらない内に……」

「もう、お母さんったら……。まだ付き合い始めたばかりなのに……」


そんな風に両親から言われ、嫌な気はしないものの、特に嬉しいとも思わない加奈子だった。


「ただいま……」


と、そこへ、弟の剛史が帰って来た。


「お帰りなさい」

「あれ？ 姉貴がいるって事は、間に合わなかったのか？」

「何がよ？」

「それはつまり、姉貴の“彼氏”に会えなかった、って事さ」

「ああ……。彼ならついさっき帰ったわ」

「なんだ、そうかあ。大輔の奴がどんな顔で来るか、見たかったのになあ……」