「嶋田君のアパート……?」
加奈子が咄嗟に思ったのは、大輔と二人で富士の五合目にドライブに行ったあの日の事だった。車に乗るために寄った大輔のアパート。かんかん照りの真夏の日差しの中で見上げた、洒落た二階建てのアパートと、階段を駆け上がって行った大輔の若々しくて元気な姿。
もちろん加奈子は入った事のないあの部屋に、美由紀は入ったと言うのか。しかも大輔と同じ蒲団かベッドに……?
あの日の強すぎる日差しがフラッシュバックし、加奈子は軽い眩暈を覚えた。
「先輩が帰るところをお酒に誘って、ちょっと強引だったけど、そのまま先輩のアパートに着いて行っちゃったんです。そして加奈子さんのアドバイス通り、色気で迫っちゃいました」
(私、そんな事言ったかしら……。それにしてもこの子の声って何て耳障りなんだろう……)
「先輩はだいぶ酔ってましたけど、記憶をなくす程ではなくて、次の日はちゃんと覚えてくれてました。私とエッチした事を」
(ああ煩い。やめてよ、もう喋らないで……)
加奈子は下を向いて目を閉じ、こめかみの辺りを指で圧した。美由紀はそれを見て、ニヤッと笑うとなおも話を続けた。
「という事で、やっと嶋田先輩と男と女の関係になれました。それを加奈子さんに報告したかったんです」
「…………」
「加奈子さん?」
「そ、それは良かったわね。じゃあ仕事に戻りましょう?」
加奈子は顔を上げると同時にそう言い、伝票を掴むと立ち上がった。美由紀が後ろを歩きながら、勝ち誇るように笑っていた事など、加奈子は知る由もなかった。
加奈子が咄嗟に思ったのは、大輔と二人で富士の五合目にドライブに行ったあの日の事だった。車に乗るために寄った大輔のアパート。かんかん照りの真夏の日差しの中で見上げた、洒落た二階建てのアパートと、階段を駆け上がって行った大輔の若々しくて元気な姿。
もちろん加奈子は入った事のないあの部屋に、美由紀は入ったと言うのか。しかも大輔と同じ蒲団かベッドに……?
あの日の強すぎる日差しがフラッシュバックし、加奈子は軽い眩暈を覚えた。
「先輩が帰るところをお酒に誘って、ちょっと強引だったけど、そのまま先輩のアパートに着いて行っちゃったんです。そして加奈子さんのアドバイス通り、色気で迫っちゃいました」
(私、そんな事言ったかしら……。それにしてもこの子の声って何て耳障りなんだろう……)
「先輩はだいぶ酔ってましたけど、記憶をなくす程ではなくて、次の日はちゃんと覚えてくれてました。私とエッチした事を」
(ああ煩い。やめてよ、もう喋らないで……)
加奈子は下を向いて目を閉じ、こめかみの辺りを指で圧した。美由紀はそれを見て、ニヤッと笑うとなおも話を続けた。
「という事で、やっと嶋田先輩と男と女の関係になれました。それを加奈子さんに報告したかったんです」
「…………」
「加奈子さん?」
「そ、それは良かったわね。じゃあ仕事に戻りましょう?」
加奈子は顔を上げると同時にそう言い、伝票を掴むと立ち上がった。美由紀が後ろを歩きながら、勝ち誇るように笑っていた事など、加奈子は知る由もなかった。