「加奈子さん、どうかしましたか？」

「あ、ごめんなさい。ちょっと考え事しちゃって……」

「部長さんの事ですね？」

「ち、違うわよ」

「加奈子さんったら照れちゃって……可愛い」

「違うって言ってるでしょ？ それより、話って何なの？」


美由紀は香川の話をする時に、『その前に』と言った。つまり美由紀の話の本題はそれじゃないという事であり、加奈子はそれを促した。


「あ、そうでした。加奈子さんに報告したい事があるんです。ちょっと、いいえ、かなり恥ずかしいんですけど……」


美由紀はそう言うと俯き気味になり、頬の辺りを赤く染めた。


「悪いけど、休み時間が終わっちゃうから……」

「あ、そうですね。じゃあ言います。月曜と火曜と同じ服だったから、加奈子さんには気付かれちゃったかもしれないんですけど……」


と言われても、加奈子は美由紀を避け気味にしていた事もあり、その事には全く気付いていなかったのだが、改めてその事を考えてみた。つまり、女の子が前日と同じ服で会社に来るとは、どういう事なのかを……


「もしかして、どこかにお泊まりしたの？」

「実はそうなんです。私……嶋田先輩のアパートに、お泊まりしちゃいました」