「美由紀ちゃんが? どうして?」

「それは、たぶんそういう打ち合わせだったんじゃない?」

「打ち合わせって、誰と?」


加奈子は志穂の話に全く着いて行けなかった。祐樹も同じらしく、ポカンとした顔で姉さん女房の話を聞いている。


「香川さんとに決まってるでしょ?」

「香川さんと!?」

「そうよ。打ち合わせって言う言い方はよくないかもしれないけど、美由紀って子と香川さんは前もってそういう会話をしてたんだと思うの。もっと言えば、美由紀って子は香川さんが加奈子を好きな事を知っていて、香川さんをけしかけたんじゃないかしら。花火の時に加奈子に告白するように。ついでに自分は大輔君の事が好きだから、お互いにがんばりましょう、とか言ったんじゃないかな」


加奈子は、志穂の想像力の逞しさに驚いた。しかしある事を思い出し、単なる妄想ではないかもしれないと思った。


「そう言えばね、香川さんは嶋田君と美由紀ちゃんはお似合いだって言ってた」

「そうなの? じゃあ、やっぱり私の想像通りなんじゃないかなあ」


昨夜の事を思い返すと、志穂の言う通りだったのかも、と加奈子は思った。自分と香川、そして大輔と美由紀は、最初からその組み合わせでくっ付くように仕組まれていたのかもしれない。それに自分はまんまと乗せられてしまった……

そう思うと悔しいような、情けないような気分になり、加奈子はがっくりと肩を落としてうな垂れた。


「加奈子、落ち込んでないで考えてみて?」

「え?」


加奈子は志穂の言葉に顔を上げた。


(この上、私に何を考えろと言うの?)