“きゃー”とか“おめでとう”とか、そういう反応を加奈子は予想していたが、志穂からも祐樹からも、何の言葉もない。

どうしたんだろうと思って二人の顔を見ても、なぜか視界がボヤけていて、二人がどんな表情で自分を見ているなのか分からなかった。


「加奈子、あんたいったいどうしたのよ?」


ようやく志穂が発した言葉はそれだった。感嘆でもなく、お祝いの言葉でもなく。


「どうって?」

「言ってる事と顔が正反対じゃない……。自分で分かってるの?」

「な、何よ。変な事言わないで。私は喜んでるんだから……」

「喜んでる? とてもそんな風には見えないわ。だったら、その涙は何なのよ?」

「えっ?」


と言った瞬間、自分の頬を大粒の涙が流れ落ちるのを加奈子は感じた。