そのようすを
イアの一連の動作を
その禁断の水を飲んだ姿を見ていた人がいた。
森のなかでも特に大きな木の影からイアの姿を見つめる人。
ラギールだった
彼はもちろん泉の水を飲むことが大罪だということを知っていたが
何も言えなかった。
一つは驚きのため
一つはイアが愛しい弟のため
そして最後は
自分が今まさにやろうとしていたことだからだ。
「な……んで……あいつ……」
ラギールは当惑していた
あまりに自分勝手で横暴な父が許せなくなり、てにかけてイアを王の座につかせようとしていた矢先だったのだ。
今朝あったときは、いつものイアだった
明るくて悪戯っ子で社交的で
優しい笑みを浮かべる可愛い弟。
のはずだった
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