積み上げられた段ボールのわずかな隙間を縫って少し奥へ行くと、入り口からは想像できないような広さの空間が現れた。


窓際に置かれたソファと、小さなテーブル。


壁際に立てられた本棚の中には数冊の本が入れられている。


その本棚の前に立って、何やら本を取り出しているのは、あたしを呼び出した張本人だ。


「遅ぇぞあんこ。」


振り向いた先生の顔には笑顔なんか無くて、むしろ目つき悪いくらいの勢いだ。


「・・・・・すいません。」


なんであたしが怒られなきゃなんないのよ、と心の中で怒りつつ、素直に謝る。


「あの・・・なんか用ですか。」


怪訝な顔丸出して問えば、先生はソファに座り足を組んだ。


・・・また似合うんだよな、そういう仕草が。


チクショー、とまた心の中で悪態をつく。


「用があるから呼んだんだよ。てかコーヒー注げ、あんこ。」


おもむろにポケットから煙草を取り出して、咥えながらあたしに指示を出す。


・・・ちょっと待て。


お前は何様だ。


っていうかあたしをなんだと思ってるの。


あまりの横暴による衝撃でその場から動けずにいると、チラッと横目であたしを見た先生が、まだ火を点けてない煙草を咥えたまま近づいて来た。