・・・・・・。
「あの・・・・・柏木くん?」
「うん?」
「近い上に見過ぎ・・・。」
柏木くんは、先生の話なんか聞かないで、ずっとあたしを見つめてる。
しかも、結構近距離で。
「だって、杏ちゃんのことこない近くで見れんの、この時間しかないねんもん。」
なんて微笑まれてしまえば、ちょっとだけキュンとする。
でも、何も言わずにこの距離でいると、本当にキスでもされそうな勢いなんだもの。
ふー、とため息にも似た息を吐けば、少しだけ距離を開けてくれる。
「むー。杏ちゃんたら、そないに嫌そうな顔せんでもええやろー。」
「え、そ、そんなことないよ!!」
本気で落ち込んだような顔をするから、慌てて体ごと柏木くんの方へ向けてなだめる。
「・・・分かってるって。ちょおっとからかってみただけや。」
あたしの焦った顔を面白がって、柏木くんはポンとあたしの頭に手を乗せた。
これ、彼の癖みたいで、たまにやられるとドキッとする。
女の子は頭ポンポンとか弱いってよく言うけど、ほんとその通りで・・・。
「もー・・・」
なんていいつつも、あたしの目は泳ぎっぱなしだった。