1時間目の授業は音楽。
「じゃあ、またあとで。」
珠樹に手を振って音楽室へ歩く。
1年生の時に音楽、美術、書道とそれぞれ選択した授業が2年生になっても引き継がれる。
だから、あたしは音楽で珠樹は美術と別々になる。
「おはよう、杏ちゃん。今日もかわええなぁ。」
席に着くや否や、隣から関西弁が聞こえる。
「・・・・・・おはよう、柏木くん。」
「せやからぁ、雅史て呼んで言うてるやろぉ?」
週に一度、音楽で隣の席になる彼は、柏木雅史くん。
3か月ほど前から、あたしを好きだって言ってくれてる。
関西出身だからか、物言いがストレートかつ効果的。
あたしに告白してから、周りにお構いなく可愛いだの好きだの言ってくるから、ちょっと反応に困るんだよね・・・。
だけど、全然悪い人じゃないし、むしろいい人過ぎるくらい。
だからこそ、返事は慎重にって思ってたらいつの間にか3か月も経ってて・・・・・・。
「なぁ・・・・・・いつになったら、オレと付き合てくれるん?」
急に真剣な口調で、まっすぐな目をする。
「っ・・・・・。」
「・・・・ゆっくりでええ。」
うろたえたあたしの頭をポンとなで、彼はそう言った。
ゆっくりにも程があるって突っ込まれそう・・・。