HR中のクラスは、多少ざわついてはいるけれど、望月先生の話が聞こえないほどではない。


あたしが一番後ろなのをいいことに、春市先生は話しかけて来たんだ。


「っていうか・・・・・・あんこって・・・。」


「え、お前、あんこだろ?」


顔には悩殺スマイルを貼り付けてるけど、先生の口調は決していつも通りではない。


「あんこ?・・・じゃないですよっ。あんずです、あんず!!」


大きい声も出せないから、必死に声量を抑えつつ訴える。


「は?あんずだろうがなんだろうがお前はあんこだよ。」


「え・・・。」


有無を言わさない表情で先生が言った直後、HRの終わりを知らせる号令がかかった。


「ゆうちゃん!!」


それと同時に春市先生の周りには女子の群れができる。


いつの間に入って来たのか、他クラスの女子まで加わっている。


「・・・・・・。」


なんだか胸の奥がキュッと締め付けられるようだったけど、教科書を持って無言でその場を離れた。