「最初は、関西弁だしやたら杏子好きオーラ出すし、なんだこいつと思って柏木のこと見てたのね。
そしたら、堺と一緒にいること多いんだなって気づいて。」
ポツリと呟くような声の大きさで、珠樹は純平くんを好きになった経緯を話してくれた。
「自分でもよく分かんないんだけど、柏木の観察してるつもりがいつの間にか堺のことばっかり見てて。
あ、あたし堺のこと好きなんだって気づいたのは、中間テスト始まるちょっと前。
部活休みになって、柏木と楽しそうに帰ってく姿とか、自習時間真剣な顔してプリントといてる姿とか、柏木の意味分かんないボケに冷静にツッコミ入れてる姿とか。
ほとんど女子と関わらないって知ってたけど、たまに接してるとこみると、ほんと紳士でさ。
あぁ、ただ爽やかで澄ましたやつじゃないんだって思ったんだ。」
だから、ちゃんとサッカーしてるとこ見たくなった、と照れくさそうな顔して珠樹は口をつぐんだ。
こうやって、素直に相手のこと思って考えてるのって、すごいことだなって思わされた。
あたしなんか、先生の言うことだいたい変なふうに曲げて受け取ってたりするし。
柏木くんもそうだけど、素直にまっすぐぶつかるのって、やっぱり大切なことなんだな。
「きっと、うまくいくよ、珠樹は。あたしが保証する。」
「杏子に保証されてもなぁ、不安しかないわ。」
「え、ひどくない。」
「だって、自分の恋すらまともに進めてないじゃん。」
「うっ・・・。」
珠樹に痛いとこ突かれて、あたしは言葉もなかった。