「じゃあ、柏木は?一緒にいてドキドキしないの?」


「・・・するときも、ある。」


珠樹はあたしの心の中が読めてるみたいな質問をしてくる。


今まさに、柏木くんへの気持ちで悩んでるんじゃないか。


「それは先生へのドキドキと違うの?」


「・・・・・・わかんないの・・。」


だから。


この前まさにあたしの頭を悩ませた問題を、珠樹はいつの間に知ってるの!?


「・・・ねえ杏子。」


「うん?」


「何度も言うけどさ、あたしは絶対、柏木の方がいいと思うよ? あんなに杏子のこと想って大事にしてくれる人、なかなかいないし。


普通に、かっこいいとも思うしさ。」


最後だけちょっとおどけて見せて、またストローに口を付けた珠樹と目線が外れる。


・・・自分でも、そこは理解してる。


久しぶりに珠樹のすごく真剣な顔されたから、やっぱり柏木くんを好きになったほうがいいんだろうなと、また心が揺らぐ。


それに、もし珠樹と純平くんがうまく行けば、ダブルデートだって夢じゃない。


あたしだって、それなりに同級生との恋とか、ダブルデートとか、憧れないわけじゃないし。


「・・・考えて、みるね。」


「あんまり考えすぎないようにね。」


ふんわり優しく微笑んでくれた彼女に、ほんとにあたしのこと心配してくれてるんだと思えば、また涙がこみ上げた。