「なにボケッとしてんだよ。入るぞ。」
いつの間にか受付から戻ってきていた先生が、あたしの頭をパシッと叩いて言う。
叩かれたところをさすりながら着いて行き、靴と球を選んでレーンへ。
「うわ・・・すごい・・。」
なんとなく映像とかで見たことはあったけど、実際に来て見て分かったその迫力たるや。
何の音なのかは分からないけど騒がしくて、みんなすごく楽しそうで。
「ほら、投げてみろ。」
春市先生はどさっと椅子に座って偉そうに言うから、仕方なく投げてみることにする。
「・・・あ・・。」
「だせぇ。」
ププッと笑った先生は、立ち上がってあたしの背後に立つ。
「こう投げんの。」
まるで後ろから抱き着かれてるみたいに腕を掴んで、少しずつ歩みを進めて投げて見せ、フォームを教えてくれる。
いきなりのことで頭がついて行かないけど、心臓は確実にドキドキしてて。
だけど、先生と一緒に投げた球は、綺麗に真ん中を通って行った。
「すごい・・・。」
あたしさっきから感嘆詞しか発してない。
でも、本当にきれいに倒れたんだもの。
「・・見てろ。」
先生の番になれば、華麗なフォームとすごいスピードで球を投げて、見事にストライクを叩きだした。