珠樹と別れて帰路に就けば、なんとなく思い浮かぶのは今日の試合のことばかりで。


必死にコートを走り回る柏木くんの爽やかな顔、ゴール奪われた後の悔しそうな顔。


転んだあと痛そうな顔をしながらも走り続けてる姿、声張り上げて指示してる姿。


試合の後、あたしを見つけてすごく嬉しそうな顔をしてくれたこと・・・・。


観に行って良かったって、心から思えるし、また行きたいとまで思ってる。


ケータイを取り出して、昨日届いたメールの画面を眺める。


『杏ちゃんのために頑張るから観ててな!!』


かわいらしくハートなんかつけちゃって、ほっこりするような文章。


本当にその通りにしちゃうから、柏木くんってすごい。


ちょっと頬を緩ませながら画面を閉じようとしたら、メールが届いたことを知らせる着信とバイブが鳴る。


「・・・・・げ。」


夏休みに入ってから、会うことも思い出すこともなかった人。


でも、名前を見れば途端に会いたくなってしまう人・・・・・。


『明日朝9時。英語科研究室』


相変わらずの端的な文章と、ざっくりとした内容。


はーっとため息をつきながら、特に返信もせずに閉じる。


「あたしはどうせ雑用係ですもんね。」


呟いてから気づいた。


・・あたしの中に、行かないって選択肢が、ない。