本当にあたしが怒っていないことが分かって安心したのか、柏木くんは純平くんに連れられてバスへ乗り込んで行った。


どうやらこの後、今日の試合を振り返ったりするためのミーティングがあるらしい。


バスの中からぶんぶん手を振ってくれた柏木くんと、小さくもにこやかに手を振ってくれた純平くん。


あんな爽やかボーイがあたしのこと好きでいてくれるって、ありがたいことだよね・・。


たまに思う事実に、正直胸が痛んだりする。


もっと早く、柏木くんと出会ってたら、あたしは先生になんか目もくれず、付き合ってたのかなとか。


考えたって仕方のないことだけれど、頭をよぎる。


「帰ろ、杏子。」


珠樹に声をかけられて我に返り、あたしたちも帰るべく足を進める。


「勝ってよかった。」


「うん、ほんと。体育祭のときも思ったけど、サッカーしてると3割増しくらいでかっこよく見えるね、柏木は。」


ニシシと笑った珠樹は、どこか楽しそうだ。


「そういえば、あの純平くんて人、誰なんだろ。」


「え・・・、うそでしょ、杏子。クラス一緒だよ。」


・・・・・え?


足を止めてぽかんと珠樹を見つめれば、彼女もあんぐりと口を開けて見つめ返してくる。


「え、2年生なの?」


「2年生どころか2組だよ!?堺純平!!知らないとかうそでしょ!?」


ぜ、全然知らなかった・・・。


もう夏休みなのに。