ピーッと笛が鳴って、みんなが一斉に走り出した。
「始まった・・・。」
わざわざ言わなくてもわかってるけど、つい口から出てしまっていた。
序盤から胸の前で祈るように手を組んで、周りはキャーキャー言ってるのに柏木くんから目が離せないでいた。
「あっ・・・。」
相手の選手とぶつかってばたっとコートに倒れた柏木くん。
思わず声をあげて、立ち上がっていた。
じっと食い入るように見ていれば、彼はすぐに立ち上がって、またボールを追って走り出した。
足・・・大丈夫だろうか。
結構派手に転んだように見えたけど・・。
無意識のうちに手にグッと力が入っている。
どうしてこんなに、あたしは彼のことを心配してるんだろう。
自分でもここまで心配する必要なんかないこと、分かってるのに。
少しでも危なげな様子になると、心臓がギュッと掴まれるようにうずく。
心配で見てられないって思うのに、なぜか目は離せずにいた。
・・・・・普通に、かっこいいんだもん。