「わー、結構人いるんだ。」


競技場に着いて、入り口で入場料を払ってスタンドに上がってみると、思ったより人がたくさんいた。


「あれ、夕季じゃん。」


「あー、珠樹!!杏子ちゃん!!」


スタンド席を歩いていると、同じクラスの女子を見つけた珠樹が手を振る。


そんなに仲がいいわけじゃないけど、それなりに話をする子だからあたしも手を振る。


「そっかー、夕季の彼サッカー部だっけ。」


彼女たちから少し離れたところに腰を下ろして、珠樹がなるほどと言った感じで言う。


たぶん、ここにいる同い年くらいの女子たちの大半は、彼氏や好きな人が出るからという理由で来てるんだろう。


あとは選手の家族とか友達らしき男子たち。


サッカーって全然詳しくないけれど、どうにか勝てるように祈るしかない。


「あ、出てきた。」


珠樹の声で顔をあげれば、コートに向かって歩く選手たちが見えた。


うちの学校のカラーは赤だから、そのユニフォームを纏った方に目を向ける。


ちなみに、対戦相手は緑だ。


「・・・あ。」


いた。


キョロキョロとして明らかに誰かを探してる風な人。


もう見慣れた背格好で、すぐに分かった。


「ユニフォーム来てると雰囲気違うね、あいつ。」


珠樹も気づいたみたいで、感心したような声で言った。