「おはよ、杏子。」
「おはよー、珠ちゃん。」
「なに、テンション高いね。」
なんてクスッと笑う珠樹も、ちょっとだけテンション高めだ。
「今日、どこ行くの?」
「ん?・・・映画館。」
ニヤッと笑った珠樹が教えてくれたのは、久しぶりに聞く名前だった。
「映画!?映画観に行くの!?」
「うん。え、お金足りないとかいう?」
「いやいや、そこは全然心配ありませんけど。」
珠樹って映画のイメージないや。
どっちかっていうと、図書館で本読んでそう。
「・・ずっと観たいと思ってたのがあるの。たぶん杏子も好きだよ。」
なんて微笑まれてしまえば、あたしだって映画行く気満々だ。
ぴったり珠樹にくっついて、駅前から歩いて10分くらいのところにある映画館に入った。
「映画とかいつ振りだろ。」
「映画館来て観るのは、宏樹生まれてからは初めてかも。」
そんな会話をしながら、半分より後ろの座席に座って、映画が始まるのを待った。