「そうだなぁ。俺まだまだ新人だから、やらなきゃならない仕事たくさんあるんだ。だから申し訳ないけど、今年の夏休みは仕事漬けかな。」
「えー、そんなこと言わないで遊ぼうよぉ。1日くらいなら空くでしょー?」
先生がやんわりと断りを入れているのに、それでも引き下がらない女子たち。
正直、あたしも夏休み中先生に会えないのかと思うと、若干憂鬱ではあるのだが。
それでも、常識的に考えて先生を誘うなんてできないし、しない。
あの子たちだって分かってないわけじゃないんだろうけど、しつこくしてでも一緒にいたいと思わせているのは、紛れもなく春市先生だ。
改めて、あの人がどれだけ人気なのかを思い知らされた気がした。
・・・ああやって呼び出されたりするの、人に話したらいじめられそうだな。
ふと気づいて、絶対口外しないようにしようと思った。
「俺だって、できることならみんなの思いに応えたいんだ。でも、みんなのためにもっと仕事覚えて、いい授業できるようになりたいんだ。
・・・だから、ね?」
ね?となんとも色っぽくも爽やかに首を傾げるもんだから、周りの女子たちは悩殺されている。
「そ、そうだね・・・。雄ちゃんの授業楽しいけど、もっと楽しくしたいもんねっ。」
「仕事熱心な先生も素敵!!」
さっきまでのしつこさはどこへやら。
あっというまに掌返しで女子たちは去って行った。
・・・なにが“みんなのために”よ。
やっぱり表の先生は、みんなに愛される王子様なわけで。
あたしが傍にいるときよりも、数段輝いて見えてしまうから、ちょっとだけ悔しくなった。