いつもと雰囲気が違いすぎる彼に戸惑って、それ以上声を出すことも動くこともできずにいる。
「・・・ハァ。」
「え・・・。」
おでこから離れた手が、柏木くんのおでこへ移動したと同時に、大きなため息が吐かれた。
「わっ・・。」
そしてその手は、あたしの腕を引っ張ってそのまま彼に抱きすくめられる。
「めっちゃ心配してんで・・。」
「うん・・。」
「ほんまに・・・杏ちゃんは、オレがどんだけ杏ちゃんのこと好きか、分かってへん。」
まるで独り言のように、抱きしめる力を強めながら耳元で囁く。
「心配かけんな、アホ。」
照れ隠しみたいな言葉が聞こえて、彼の顔が首筋に埋まる。
どう反応していいのか分かんなくて、ただただじっとしてるしかなくて。
「・・ご、めん・・・。」
そう絞り出すのがやっとだった。
「何してんだ、お前ら。」
しんとした沈黙を破った声は、聞きなれた不機嫌なもので。
「・・春市先生。」
少しだけ顔をあげた柏木くんが、いつになく真剣なトーンで声の主を呼んだ。